
最近、平屋が人気です。大震災が続いてることもあって、需要が高まってるようです。
雑誌やテレビで見る機会が増えたので、平屋に憧れる方も増えたと思います。ですが、新築するマイホームに平屋を選ぶかどうかは慎重に考えましょう。
平屋にはメリットが多いですが、おなじぐらいデメリットもあります。これから解説するので、自分に平屋が合ってるのかどうか検討してみてください。
代表的な平屋のデメリット5つ
さっそく、代表的な平屋のデメリットからあげていきましょう。
平屋は、二階建てと比べて以下のようなデメリットがあります。
平屋のデメリット
- 平屋の新築はコストがかかる
- 日照の確保が難しい
- 覗かれやすい
- バルコニー(ベランダ)がない
- 水害時に二階に逃げられない
順番に解説していきますね。
平屋の新築はコストがかかる
「二階建てより、平屋の方が安そう」と思ってる方、けっこうおられます。残念ながら、平屋の方が建築するのにコストがかかります。

理由は、2つあります。
平屋が高くなる理由
- 広い土地が必要
- 工事費の坪単価が上がりやすい
たとえば同じ床面積の家を作る場合、二階建てに比べて平屋は約2倍の土地が必要です。つまり、土地代が約2倍かかるということですね。
さらに、平屋は坪単価が上がりやすいです。

二階建てに比べて、平屋はコストアップする項目とコストダウンする項目があります。残念ながらコストアップ額がコストダウン額を上回るので、坪単価が上がってしまいます。
いくつか、例を表にまとめておきます。
コストアップ | 大きな土地が必要 |
---|---|
二階建てより家の形が複雑化しやすく外壁などの材料費が上がりやすい | |
大きな基礎が要るので基礎の施工費が上がる(防蟻処理費用も上がる) | |
大きな屋根が要るので屋根の施工費が上がる | |
コストダウン | 二階建てより外壁面積を減らすことができる |
階段、階段ホール、2階用トイレなどを削れるので建築面積を減らせる | |
バルコニーが要らないのでバルコニー防水工事が不要 |
「外壁」だけ、コストアップとコストダウン両方に入ってます。矛盾してるように見えるので、補足説明しておきます。
たとえば、上から見ると正方形で1辺の長さが6mの二階建てがあったとします。(このような1階と2階の面積が等しい二階建てを「総二階」と言います)
この家の延べ床面積は、72m²。1階と2階の外周の合計は、48mになります。
では、この総二階の家の1階と2階をくっつけたような平屋ならどうなるでしょう?
この平屋の延べ床面積は、72m²。外周は、36mになります。
なんと、さきほどの二階建てと延べ床面積が同じなのに外周が12m減りました。これが「コストダウン」になるパターンです。
ところが平屋は間取りを作るのが難しく、必ずしも完全な長方形でプランできないこともあるのです。

たとえば、以下のような「中庭があるコの字型のプラン」だと外周はどうなるでしょう?
延べ床面積は、同じく72m²。なのに、なんと外周は48mになります。
これだと長方形の平屋より外周が12m長くなってしまい、総二階と同じ長さです。平屋のメリットを活かした外壁のコストダウンは、コストアップで相殺されてしまいました。
建築工事において、屋根や基礎は大きなコストがかかる工事のうちのひとつです。ですから、平屋の建築ではこの2つのコストアップがズシッとのしかかってくるのです。
あとは、いかに建築面積を減らすかですが……。階段やトイレを無くしても、せいぜい2坪減がいいところでしょう。

日照の確保が難しい
先述のとおり、平屋は間取りを作る難易度が高いです。何も考えずに作ると廊下が多くなったり、家の中心部が暗い間取りになりやすいです。
隣家が二階建て以上で、距離が近い場合も困ります。直接的あるいは間接的に、家の中が暗くなる原因になります。
平屋が暗くなる理由
- 間取りが悪く家の中心部まで光がとどかない
- 隣家の陰に入ってしまう
- 隣家に覗かれるのが嫌でカーテンを閉めてしまう
採光がうまくできないと、昼間から電気を点けることになります。人生かけて建てたマイホームがこの状態だと、かなりのストレスですよね。
なんとなく暗い家は気分が落ち込むだけでなく、冬場は寒く感じます。平屋は、ぜひとも設計力がある建築会社に依頼したいところですね。

覗かれやすくプライバシーの確保が難しい
平屋は「どの部屋も隣家の2階からのぞかれやすい」というウィークポイントがあります。道路の通行人の視線も考えると、プライバシーの確保が難しいのです。
その結果、お庭に塀や植え込みを作りがち。でも、それをしてしまうと防犯上良くない面もあります。
泥棒が身を隠せるスペースを作るのは、おすすめできません。建築会社には、覗かれない工夫と防犯を両立したプランを考えてもらいましょう。
バルコニー(ベランダ)がない
平屋には、バルコニーやベランダがありません。これはコスト面では利点ですが、洗濯物干し場を別途確保する必要があります。
1階の干し場は覗かれやすく、下着などの盗難リスクが上がる心配もあります。周りから見えにくくする工夫と、防犯対策が必要です。

できれば、にわか雨対策もやっておきたいところですね。干し場の軒を深くしたり、あるいは部屋干しできる場所を設けるのもいいでしょう。
水害時に二階に逃げられない
このところの異常気象で、災害の規模が大きくなってるように感じますよね。たとえば、ひどい水害で家の2階まで浸水した地域があります。
ニュースで、家の屋根に避難した人が逃げられなくなり助けを求めてる映像がながれたり。あの規模の水害が起こると、平屋は水の中に沈んでしまいます。
必ず、自治体が出しているハザードマップ(災害マップ)は見ておきましょう。平屋は、水害が起こるかもしれないエリアを避けて建てた方が安心です。
代表的な平屋のメリット5つ
つづいて、代表的な平屋のメリットをあげていきます。
平屋は、二階建てと比べて以下のようなメリットがあります。
平屋のメリット
- 階段が要らない
- 家が広く感じられる
- 屋根や外壁のメンテナンス費用が安く済む
- 地震のとき比較的安心できる
- 太陽光発電パネルを載せやすい
順番に解説していきますね。
階段が要らない
平屋は、2階へ上がる階段が要りません。階段がないと、ご想像のとおり高齢になってもラクに過ごせます。
まず、転落事故が起こりません。大変な階段掃除も不要で、ロボット掃除機は1台で済みます。
「階段を上がるのが億劫で、2階は使わなくなった」といことにもなりません。老後も、すべての部屋を有効活用できます。

もちろん、若い世帯にもメリットがあります。たとえば、以下の2つは大きな長所です。
- 階段スペースを他のことに使える
- 動線が短くなる
階段を設置するには、1坪ほど必要です。階段が無くなれば、そのスペースを他のことに使えます。
1坪あれば、収納や書斎スペースを作ることができます。

また、平屋は生活スペースが上下階に分断されません。その結果、動線が短くなります。
たとえば、洗濯機から洗濯物干し場までの移動がラクです。重たい洗濯物を持って、2階のバルコニーまで上がる必要がありません。
家が広く感じられる
二階建ては縦に伸びますが、平屋は横に伸びた形になります。そうするとドッシリ落ち着いたデザインになり、大きく感じられます。
ただし、敷地めいっぱいに建ててしまうと窮屈な感じになってしまいます。少し敷地にゆとりをもって建てた方が、平屋の安定感を活かせます。
間取りも、1階と2階に分散するより広く感じられます。ゆとりを演出できるのが、平屋の間取りのメリットです。
屋根や外壁のメンテナンス費用が安く済む
外壁や屋根は、20~30年に一度メンテナンスが必要です。その際、二階建ては足場を組む必要があり、小さな家でも20万円以上の足場代がかかります。

いっぽう、平屋は足場無しで作業できるケースもあります。足場が必要な場合も、同延べ床面積の二階建てに比べ安く済むことが多いです。

屋根や外壁のメンテナンス費用が安く済む反面、基礎のメンテナンス費用は高くなります。5年~10年ごとにおこなうシロアリ防蟻処理の施工面積が、増えるからです。
地震のとき比較的安心できる
平屋は、以下の理由で「地震のときに揺れにくく、壊れにくい」と言われています。
- 建物が低い(重心が低い)
- 軽い(2階が載っていない)
- 構造が単純
地震では、上階になるほど揺れ幅が大きくなります。大地震で2階以上の重みと揺れに耐えられなくなり、1階が倒壊した家もよく見かけます。
そういう状況を体験したり経験すると、平屋を選びたくなるのが心情。実際、熊本地震の被災地では平屋の需要が増えたそうです。
ですが、耐震に関してはそれほど単純な話ではありません。壁の量や屋根材の重さ、地盤の質も影響します。
あくまで「平屋が有利」ぐらいの感覚で、耐震を考えた家づくりをすることが大切です。

太陽光発電パネルを載せやすい
平屋の大きな屋根は、建築コスト的にはデメリットになります。ですが、太陽光発電を載せる場合はメリットになります。
たくさんの太陽光パネルを搭載できるので、自家消費用だけでなく売電量も増やせます。
南側に向け片流れの屋根にすると、たくさんの発電量が期待できます。ただし平屋の片流れは不細工になりやすいので、設計するときにデザイン力が要ります。
このウワサって本当?平屋に関する疑問
上述のメリット&デメリット以外にも、平屋には長所と短所があります。中でも、以下のことに関心を持っている方が多いです。
- 勾配天井にできる?
- 吹き抜けを作ることは可能?
- ロフトを付けることができる?
- 平屋はバリアフリーと言える?
- 二階建てより防犯対策が必要?
- 家族のコミュニケーションが取りやすくなる?
こちらも、詳しく解説していきましょう。
勾配天井にできる?

写真:mitsさん / PIXTA
平屋も、勾配天井を造ることができます。むしろ、家の中に高低差がない平屋にとっては「相性がいい」とさえ言えます。
3つほど、例をあげてみましょう。
- LDKの上を勾配天井にしやすい
- ロフトを設けられる
- トップライトやハイサイドライトから採光できる
2階がない平屋は、そもそも勾配天井を作りやすいです。LDKの上を勾配天井にするのも、カンタン。開放的な空間演出ができます。
勾配天井にすることで、ロフトを設けることもできます。天井窓(トップライト)や高い位置の窓(ハイサイドライト)を付け、採光することも可能。
ただし、以下の点は注意が必要です。
- 電球交換しやすい照明が必要
- 熱伝導率が低い断熱材が必要
- 雨音対策が要るような屋根材は避ける
勾配天井に照明を付ける場合、電球交換するときのことも考えましょう。脚立に乗っても届かないような照明は、NGです。
また、勾配天井は屋根から熱(太陽の放射熱)の影響を受けやすいです。シッカリ屋根断熱しておく方がいいでしょう。
さらに、勾配天井は後から防音するのが難しいです。ガルバリウム鋼板のような、雨音が響く屋根材は避けましょう。
吹き抜けを作ることは可能?
2階がない平屋に「吹き抜け」は造れません。
- 吹き抜けとは?
- 天井や床を作らず、1階部分と2階部分を連続させたスペースのこと。
先述のとおり、勾配天井なら造ることができます。
ロフトを付けることができる?
平屋にロフトを造ることは、可能です。ロフトはキッズスペースや書斎、簡易な寝床として人気です。
ただし、ロフトの天井高は「最も高い部分が1.4m以下」と規定されています。他にもいくつか規定がるので、代表的なものをあげておきましょう。
- ロフトの天井高さ(最高内法高さ)は1.4m以下とする
- ロフトに設けるはしごは固定式としないこと
- ロフトの上限面積はロフトが属する階の床面積の2分の1未満とする
なお、ロフトの規定は各自治体によって見解が違います。住宅建築地の規定を参照してください。
平屋はバリアフリーと言える?
平屋は「階段が無い」という意味ではバリアフリーと言えます。老後も、すべての部屋を有効活用できます。
それ以外の部分では、二階建てとそれほど変わりません。車いす生活や介護が必要になったときのことを考えると、十分とは言えません。
老後に備えるのであれば、マンションという選択肢もあります。間取りは平屋と同等であり、駅やスーパーから近いなど便利な物件を買うこともできます。
二階建てより防犯対策が必要?
平屋はどの窓もハシゴを使わず侵入しやすいので、2階以上に防犯対策が必要です。とくに寝室は、窓を開けっ放したまま寝られるようにしたいところ。

平屋は、プライバシー確保のために塀や植え込みを作ってしまいがちです。これは防犯面でデメリットもあるので、対策が必要です。
洗濯物干し場が1階にあり、除かれやすいのも何とかしたいところ。侵入を防ぐだけでなく、侵入者を威嚇する方法も検討してみましょう。
たとえば、こんな方法があります。
- 窓ガラスを防犯ガラスにする
- 人感センサーライトを設置する
- ダミーの防犯カメラを取り付ける
ペアガラスや防火エリアで使う網入りガラスは、防犯対策になりません。賊の侵入を防ぎたいのであれば、防犯ガラスを採用しましょう。
熱を感知して光る人感センサーライトは、けっこう有効です。侵入者に気づくきっかけになるし、侵入者に対し心理的なインパクトをあたえます。
防犯カメラは、ダミー(偽物)であっても侵入の抑止力になるでしょう。
家族のコミュニケーションが取りやすくなる?
平屋は同じ階に全ての部屋があるので、家族の気配を感じやすいと言われます。これは、必ずしも「そのとおり」と言えません。
平屋であても、家族が私室にこもってしまうとコミュニケーションが生まれません。あまり、私室の居心地をよくし過ぎない方がいいでしょう。
また、家族が顔を合わせやすい動線も必要です。私室からリビングを通らないとトイレに行けないなど、間取りで工夫しましょう。
平屋 VS 二階建て(三階建て)!メリットとデメリット比較
さて、いろいろ書きましたので最後にまとめておきます。ついでに、平屋と二階建ての「メリット&デメリット」を比較してみましょう。
まずは、二階建ての代表的なメリットとデメリットをあげてみます。
二階建てのメリット
平屋に比べ、二階建てには以下のようなメリットがあります。
- 土地が小さくて済む
- ゾーニングしやすい
- 高低差を活かした空間活用ができる
延べ床面積が同じなら、平屋より二階建ての方が小さな土地に建てられます。土地が小さくて済むということは、土地購入資金も少なくて済むということです。
生活空間が1階と2階に分断されることも、デメリットだけではありません。「1階は客間やLDKで、2階は私室」のようにゾーニングしやすく、メリハリを付けられます。
「スキップフロア、2階リビング、階段踊り場の活用」も二階建てならでは。高低差を活かした空間設計は、平屋が不利です。
二階建てのデメリット
平屋に比べ、二階建てには以下のようなデメリットがあります。
- 階段が要る
- 足音が下に伝わりやすい
- 老後、2階を使わなくなる
二階建てには、階段が必要です。上り下りや掃除が大変で、階段下にデッドスペースができやすいです。

1階の天井(2階の床)は、防音されていないことがほとんどです。二階の足音や椅子を引く音、場合によっては話し声も聞こえることがあります。
子供たちが独立したあと、2階に空き部屋ができてしまうご家庭も多いでしょう。足腰が弱ってくると、まったく使わなくなることも考えられます。
あなたは平屋に向いてる人?二階建てに向いてる人?
さて、平屋と二階建てを比較していきましょう。ここまで解説してきたメリットとデメリットを、表にしてみますね。
項目 | 平屋 | 二階建て |
---|---|---|
建築コスト | ||
採光 | △ | |
プライバシー確保 | (2階) | |
洗濯物干し場 | ||
水害のときの2階避難 | ||
老後の使いやすさ | (2階) | |
引っ越しの荷入れ労力 | ||
階段を無くせるか | ||
ゆとり、ゆったり感 | ||
屋根や外壁のメンテナンスの容易さ | ||
地震のときの安心感 | △ | |
太陽光パネルの載せやすさ | △ | |
勾配天井の造りやすさ | △ | |
吹き抜けを造れるか | ||
ロフトを造れるか | ||
バリアフリーか | △ | |
防犯面は安心か | △ | |
家族の気配を感じられるか | △ | △ |
ゾーニングのしやすさ | ||
高低差を活かした空間活用 | ||
上階の騒音 |

平屋と二階建ての向き不向きを、まとめてみますね。
平屋に向いてる人
平屋は、こんな方に向いてると思います。
平屋はこんな方に向いてる!
- 多少建築コストが割り高になってもいい人
- ゆったり落ち着きのある家に住みたい人
- 家族の気配が感じられる間取りにしたい人
- 田舎暮らしでも全然平気な人
- 老後のことを考えできるだけバリアフリーにしたい人
ずばり「のんびりと過ごしながら私生活の質を高めるスローライフ派」にオススメ。
「今は違うけど、定年後はスローライフがいい」という方も平屋予備軍です。選択肢に入れ、じっくり検討してみてください。
二階建てに向いてる人
二階建ては、こんな方に向いてると思います。
二階建てはこんな方に向いてる!
- 田舎より、便利な都会で暮らしたい
- 吹き抜けなど高さを使った空間演出がしたい人
- 家族と言えどプライバシーは確保したい人
- できるだけ防犯や覗かれ対策をしたい人
- 河川流域など水害の可能性がある場所に住みたい人
ずばり「合理的で、躍動感やメリハリある私生活を好む都会派」にイチオシ。
スタイリッシュなデザインが好きな方も、平屋より二階建てがいいです。高気密高断熱派の方にも、二階建てをオススメします。(平屋より有利)
【まとめ】平屋のメリットとデメリット
二階建てと比べて、平屋にはメリットとデメリットがあります。ちゃんと検討したうえで、平屋を建てるかどうか決めたいところです。
平屋の魅力は、なんと言っても老後の使いやすさ。それから、ゆったりした外観と間取りではないでしょうか。
いっぽう土地代や坪単価が上がる傾向にあり、予算も上がりやすいのがデメリットと言えます。あこがれだけで平屋を選ばず、要望や予算もふまえて自分に合ってるか考えましょう。
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