
「40歳で年収400万円だけど、住宅ローンを借りても大丈夫かな?」そうお考えの方が、けっこう多いです。
もちろん、住宅ローンを借りて住宅を買うことは可能です。ですが、40歳前後で年収400万円ぐらいの方は以下の2点に十分注意してください。
- 豊かに暮らせる借入額の上限
- 年齢的なタイムリミット
ようするに、身の丈に合った返済額になるように借りること。そして、老後の生活が苦しくならないように計画的に完済することが大事なのです。
では「身の丈に合った返済額」とは、どれぐらいなのでしょう?「計画的に完済する」とは、どういうことなのでしょう?
詳しく解説していきますね。
ではさっそく、説明していきます。
住宅ローンの借入限度額は?(世帯年収400万円の場合)
「40歳で年収400万円だけど、住宅ローンを借りても大丈夫かな?」そうお考えの方がけっこう多いですが、実際のところどうなんでしょうか?
心配ご無用。「40歳前後、年収400万円前後」で家を買われてる方、少なくないです。
まずはその辺りから説明しつつ、借入額の目安や限度額について解説しますね。
40代、年収400万円世帯で家を買う人は多い?少ない?
さて「年収400万円」で家を買う人は多いのでしょうか?それとも、少ないのでしょうか?
じつは、国交省が「住宅動向市場調査」の報告書を公開しています。平成29年度の調査資料によると、世帯年収の平均は以下のようになっています。
平均世帯年収
- 注文住宅(全国) ⇒ 698万円
- 注文住宅(三大都市圏) ⇒ 734万円
- 分譲戸建住宅 ⇒ 701万円
- 分譲マンション ⇒ 798万円
- 中古戸建住宅 ⇒ 668万円
- 中古マンション ⇒ 632万円
世帯年収で見ると、平均が632万円から798万円となってます。
資料を見ると、一番多いのは400万円以上~600万円未満の世帯。次いで、600万円以上~800万円未満の世帯です。
世帯年収400万円未満も少なくありません。とくに、注文住宅や中古住宅では購入者の1割ぐらいが世帯年収400万円未満です。
さらに同資料を見ると、世帯主の年齢は30代~40代が大半です。(注文住宅の「建て替え」を除く)
ざっと、世帯主の平均年齢を書き出してみましょう。
世帯主の平均年齢
以上の資料から「40歳前後で住宅を購入してる人が多い」ということ。「年収400万円代で住宅を購入してる人は少なくない」ということがわかります。
ただし、どんな住宅でも買えるというわけではありません。住宅ローンは、家計に負担がかからない程度の借入にしておくことが大切です。
ということで「年収400万円世帯の適正な住宅ローン借入額」を探ってみましょう。
住宅ローンを借りるとき、まず審査があります。審査で通過した融資額は、基本的に「返せる金額」と考えていいでしょう。
なぜか?理由は、2つあります。
住宅ローンは他のローンに比べ審査が厳しいので、そもそも貸し倒れが起こりにくいです。実際のところ、住宅ローンの破たん割合(デフォルト率)は0.3%ぐらいです。
住宅ローンが破たんしにくい理由については、こちらで詳しく解説しています。もっと知りたい方は、ご一読ください。
家を買うとき、住宅ローンを使う人が大半です。 かなりの高額を借り入れるので、契約書にハンコを押すとき相当緊張します。 「 ...
とは言え「審査に通ったから満額借りてOK」というわけではありません。あくまで、家計に負担がかからない程度の借り入れ額にしておくのが理想です。
ということで、家計から「月々の返済額の目安」を出す方法を解説したいと思います。
住宅ローンの返済額は、どれぐらいが理想なのでしょうか?
それを考えるうえで、まず現状の「住居費」を計算してみましょう。たとえば、賃貸マンションで暮らしているなら「家賃+共益費」が住居費ですね。
今のあなたの住居費は、ゆとりがありますか?その住居費を負担に感じていないなら、住宅購入後の住居費も同等額でOKということです。
ポイント
ただし「新居の住居費 = 住宅ローンの月々の返済額」ではありません。新居には、住宅ローン以外にかかる「住居費」があります。
新居でかかる住居費の例をあげておきますね。
新居でかかる住居費
住宅を買うと、保険や納税が必要になります。さらに、一戸建てであろうとマンションであろうと将来の修繕積立が必要です。
このような、毎年あるいは毎月かかる住まい関連費は「住居費」の一部と考えましょう。そのうえで、月々の住宅ローン返済額を計算する方が安全です。
ポイント
例として、以下の表の金額で計算してみましょう。
まず、現在の住居費から。
つづいて、新居の住居費です。項目は、月額あるいは月割計算します。
表のようなご家庭の場合、月々の住宅ローン返済額の目安は以下のとおり。
90,000円 - 30,000円 = 60,000円
つまり「月々6万円以下の返済額になるように借りればいい」ということです。
では、銀行は年収400万円世帯にいくらまで貸してくれるのでしょうか?そもそも、月々の返済額が6万円になるような借入を許可してくれるのでしょうか?
ということで、つづいて借入上限額の説明をしますね。
住宅ローンの融資限度額は年収から試算でき、およそ年収の6倍が目安になります。ということは、年収400万円の方なら約2,400万円が上限ということですね。
でも、なぜ「6倍」なのでしょう?
住宅ローン融資額の上限は、ほぼ「年収」で決まります。(この場合の「年収」は税込み年収であり、手取りではありません)
住宅ローン融資額の上限は、年収に比例して上がっていきます。とくに、返済比率(返済負担率ともいう)が上がると大きく増えます。
(返済比率の説明は、後述します)
さっそく、その一例を表にしてみましょう。
上の表は、審査金利4%。返済期間35年。返済比率は、以下の数字で計算しています。
返済比率の例
表を見ていただくと、一目瞭然。年収400万円以上は、年収の6倍以上~7倍未満が融資限度額になってます。
ねんのため申し上げますが、審査金利や返済比率は金融機関ごとに違います。表の融資限度額は、あくまで目安と考えて下さい。
なお、返済期間が35年未満になると限度額も下がります。
つづいて「審査金利」や「返済比率」の意味を解説していきますね。
この2つによって「借入限度額」が決まるので、知っておきましょう。
上述の表では、年収から融資限度額を算出してます。その際「審査金利」と「返済比率(返済負担率)」を使って計算しました。
両方とも聞きなれない言葉だと思うので、説明しておきます。まずは、審査金利から。
なお、審査金利は変動金利型を選ぼうが固定金利型を選ぼうが変わりません。「変動金利型の方がイッパイ借りられる」ということはないので、覚えておきましょう。
ちなみに、実行金利なみに低い審査金利を使う金融機関もあります。その場合は融資上限額が上がりますが、金利上昇局面で破たんしやすい融資になります。
さて、つづいて返済比率の説明です。
ということで、もしカーローンやカードローンの返済中なら、住宅ローンの融資限度額は減額されます。
それから、返済比率が低いほど生活にゆとりができることを覚えておきましょう。「25%を境にして、住宅ローンのデフォルト率は2倍近く上昇」というデータもあります。
銀行が「返済比率35%」で審査してくれたからといって、安心してはいけません。年収400万円で返済比率35%まで借入すると家計がどうなるか、シッカリ考えましょう。
年収400万円世帯の生活費
銀行任せにせず、自分で返済比率をコントロールしたいところですね。
少し、余談を。
住宅ローンの審査では、年収以外のものもチェックされます。とくに、以下の2つは重要視されます。
上述の2点は、収入が安定しているかどうかチェックするために重要視しています。じつは「企業規模と返済の延滞には相関関係がある」ことがわかっています。
では、転職している人はどのような判定になるのでしょうか?ステップアップ転職というのもあり、一概に「転職=不利」とは言えなさそうです。
じつは、収入や勤務先、勤続年数の査定方法は2種類あります。
勤続年数の査定方法
「要綱審査」とは、住宅ローン要綱にそって審査する方法です。要綱に「勤続2年以上」と書かれていたら、勤続2年未満の人は「否認」となります。
いっぽう、最近増えてきている「リスク計量化モデル審査」は、要綱の各項を加点減点しながら審査していきます。
この審査方法を採用している金融機関なら、勤続年数が短くても年収が上がっていると「承認」されやすくなります。
とくに信用力が高いご職業なら、加点されやすいでしょう。(とはいえ、あまりにも転職回数が多いと評価が下がることもあります)
以下、参考まで。
ここから先は、年収だけでなく「年齢」もあわせて解説していきます。
基本的に、住宅ローンは借りられる年齢制限と最大融資年数があります。これは金融機関によって違いますが、たとえば以下のような感じです。
住宅ローンには「完済時年齢」の制限があります。
つまり上述の例では、40歳までに住宅ローンを借りれば35年返済にできるが、41歳以上はだんだん最長融資期間が短くなるということ。
最長融資期間が短くなればなるほど、とうぜん融資限度額も下がっていきます。参考までに、年齢別で借入限度額を表にしてみましょう。
さて、以下の条件で借入限度額を計算して表にしてみます。限度額まで借りたときの「月々の返済額」の目安も載せておきますね。
結果は、以下のとおりです。
どうでしょう?借入限度額が下がっていくの、わかりますよね。
もし2,500万円が希望額だとすると「43歳までにローンを組め」ということになります。
40歳、年収400万円の方が住宅ローンを限度額まで借りると、家計はどうなるんでしょう?リアルな数字を当てはめて、シミュレーションしたいと思います。
政府が発表してる2018年度の「家計調査」を参考に、1か月間の家計を表にしてみますね。ピックアップする集計対象、および結果は以下のとおりです。
週家対象世帯 家計の1か月平均
年収400万円世帯の手取りは、年収のおよそ8割ぐらいになります。年収422万円の家庭であれば手取りは約337万円になる、ということですね。
上の表の支出だと、年間合計が約304万円(252,942円×12か月)です。なので、33万円貯金(337万円-304万円)できている計算です。
この状態から住宅を買うと、以下の支出が無くなります。
いっぽう「40歳、年収422万円」の借入限度額は約2,780万円になります。(審査金利4%、返済比率35%で計算)
もし「金利1.5%、35年返済」で満額借りると、月々の返済額は85,119円になります。なので実行時の返済比率は24.2%になり、破たんしにくい借入と言えるでしょう。
ここまで、まとめてみましょう。
さて、ここで思い出していただきたいことがあります。
先述のとおり、新居の住居費は「住宅ローン返済」だけではありません。以下の費用も必要です。
マンションのみ必要な「管理組合費」を除いた費用が、月割で3万円かかるとしましょう。そうすると、新居の住居費はローン返済と合わせて「約11.5万円/月」になります。
これが、旧居の住宅関連費(住居費、駐車場代、住宅用貯金)と比べて高いのか安いのか?住宅購入後は、家計のゆとりはどうなるのか?毎月どれぐらい預貯金ができるのか?
11.5万円が苦しいと感じるなら、満額借りてはいけないということです。無理のない借入ができるように、シッカリ見極めましょう。
さて、ここまで「ゆとりある、無理のない返済計画」が大事だと解説してきました。
では、具体的には何に対してどのように気を付ければいいのでしょうか?ここまでの「おさらい」も兼ねて、まとめてみますね。
これは年収400万円世帯に限ったことではないですが、以下のことを確認するといいです。
保険や納税なども含めた「新居の住居費」が、これまでの住居費にくらべ無理がないか。住宅ローンは、そのことを念頭におき借りるようにしましょう。
それと同時に、完済時の年齢もシッカリ意識しておきましょう。定年退職後も返済が必要なら、返済資金をどうするのか考えておくべきです。
もうひとつ。
住宅ローンは「銀行が貸してくれるなら、いくら借りてもOK」ではありません。借りた後のあなたのライフプランが堅実か、チェックしておきましょう。
たとえば、こんなことは大丈夫でしょうか?
このへんは、ご家庭によって予算が変ってきます。学資なんかは、子供が1人なのか2人なのか3人なのかで大きく違います。
ですから私は、必ず各お施主様にライフプランニングしていただいてました。そうすることで、20年後、30年後、40年後の家計が赤字にならないか予測できるのです。
住宅購入をふまえたライフプランニングは、とってもとっても大切です。ご興味ある方は、ぜひ下の記事を参考にやってみてください。
今回は、家を買うときのライフプランについて解説したいと思います。 ライフプランとは、人生設計のこと。とくに、金銭面からの ...
住宅ローンは、借りた後もメンテナンスできます。むしろ、放置はダメです。
無駄な利息支払いを減らすために、以下のことを活用しましょう。
どの方法も、利息を減らす効果が高いです。上手に使っていきましょう。
「40歳、年収400万円」で住宅ローンを借りることは、可能です。ただし、豊かな暮らしができる返済額になるように自分に合った借入額にしましょう。
銀行の審査が通れば、返済可能な金額だと思っていいでしょう。でも「返済可能な金額」と「豊かに暮らせる返済額」は同じではありません。
場合によっては、借入上限額から自分の意志で減額することが大切です。ライフプランニングなどを活用し、将来の家計が赤字にならない資金計画を作りましょう。
おすすめの関連記事
年収400万円世帯の適正な住宅ローン借入額の目安は?
住宅ローンの破たんが不安!?過剰な心配が要らない2つの理由
月々の返済額を家計から試算する方法
家賃
80,000円
共益費
10,000円
合計
90,000円
火災保険・地震保険
3,000円
固定資産税・都市計画税
17,000円
修繕積立金
10,000円
合計
30,000円
年収から借入可能額を試算する方法
年収
審査金利
返済比率
融資限度額
200万円
4%
25%
941万円
300万円
30%
1,693万円
400万円
35%
2,634万円
500万円
3,293万円
600万円
3,952万円
700万円
4,611万円
800万円
5,269万円
900万円
5,928万円
1,000万円
6,587万円
どうやって借入限度額(融資上限額)が決まるの?
住宅ローン審査で見られるのは年収だけじゃない!勤務歴も大事
信用力が高いご職業
弁護士、弁理士、公認会計士、医師、看護師、教授、警察官、消防職員、自衛隊員など
審査が厳しいご職業
自営業、社長(会社経営者)、個人事業主、フリーランス、フリーターなど
年収400万円、40歳以上の世帯主が住宅ローンを借りるとどうなる?
融資可能年齢
20歳以上~66歳未満
最大融資年数
最長35年(完済時年齢76歳未満)
年齢別の借入限度額(審査金利4%、返済比率35%)
年齢
返済期間
借入限度額
月々の返済額
40歳
35年
2,634万円
80,648円
41歳
34年
2,599万円
81,358円
42歳
33年
2,562万円
82,064円
43歳
32年
2,524万円
82,801円
44歳
31年
2,485万円
83,572円
45歳
30年
2,443万円
84,312円
46歳
29年
2,400万円
85,092円
47歳
28年
2,355万円
85,878円
48歳
27年
2,309万円
86,712円
49歳
26年
2,260万円
87,521円
限度額まで住宅ローンを借りた場合の家計簿シミュレーション
項目
平均
食費
食料
46,982円
外食
11,388円
住居費
家賃地代
57,537円
設備修繕・維持
343円
光熱・水道
電気代
7,114円
ガス代
6,307円
他の光熱
760円
上下水道料
4,087円
家具・家事用品
6,550円
被服および履物
7,591円
保健医療
8,769円
交通・通信
交通
4,179円
自動車等関係費
17,111円
通信費
15,257円
教育費
8,930円
教養娯楽
教養娯楽
12,395円
書籍・他の印刷物
1,898円
宿泊料・パック旅行費
1,197円
月謝類
1,843円
その他の消費支出
諸雑費
17,799円
こづかい
5,179円
交際費
7,970円
仕送り金
1,765円
合計
252,942円
住居費(家賃地代・設備修繕・維持)
57,880円
駐車場代
家計踏査には具体的な金額無し
住宅購入のための預貯金
家計踏査には具体的な金額無し
住宅ローンを借りるときの留意点
ライフプランとは?骨太の住宅購入予算を作る方法
【まとめ】住宅ローン、40歳で年収400万円だけど借りて大丈夫ですか?